野呂薫 野呂千佳子(ひろの窯) | 津軽焼

江戸時代に由来し、弘前地方に伝承される「黒に白」の焼物。
伝統と斬新、シンプルさと新しさの両側に進んでいく作家夫婦の作品群です。

津軽焼を志したきっかけは何ですか?

(薫さん)興味も何もなく、若い頃はぶらぶら遊んでいたけど、「若い者が遊んでいてはダメだ」と連れて行かれたのが、オヤジの知り合いがやっていた陶芸のところでした。地元にこういうものがあることすら知らなかったし、手先が器用だとか芸術が好きだということもなかったです。

最初の2・3年は、ただ捨て置かれます。本当にやる気があるのか、時間をかけて見られていました。その後「こいつはやれる」と思われると、今度は仕事が山のように投げ込まれます。それに付いていくのが精一杯でしたが、伝統や技術をしっかりと先輩に学ばせてもらって、今は感謝しています。

結婚を期に独立しましたが、独立当時も食べていけない、今でも食べていけないという(笑)でも、この仕事は食べていけると考えちゃだめだと思ってます、好きなことをしてるんですから。

津軽焼とは、弘前藩4代藩主・津軽信政により現弘前市付近で発展した焼き物。江戸の職人を呼び集め、土の調査から一大産業を気付きあげた信政の功績は大きく、今も名君とうたわれている。
  • 下働きの時
  • 自分の作品作り
  • ひろの窯
  • 独立の時

食べられなかったんですか!?

陶芸教室でなんとか食いつなぎながら、最初にやったのが「ホタテ灰」。ホタテなんて誰も使う人がいなかったんですね。結果、すごく売れました!(笑)

地球は1個、材料は同じなんだから津軽焼が他と違うことなんて実際のところ無いと思いますし、この土地でやればそれだけで津軽焼なんだって思っています。津軽焼という名前は大きいけれど、そんなものなんだって。

新しい何かに踏み込んでやってみると、いつも助けてくれる人が現れますし、興味を持ってくれる人も出始めます。不思議なものです。

だから、どんな人にだって、土や薬品の調合も全部教えます。作る人間が違えば結果は全然違うものになりますし、隠したってそもそも意味がありません。それに、津軽焼に関わったからには残したいと思いますから。食べられずに辛かった時期は長かったですが、辞める気もないし嫌だとも思いませんでした。窯場に来れば、気持ちが晴れるんです。

  • 津軽焼の歴史
  • 津軽焼の製法

奥様の千佳子さんはどのような作品を?

(千佳子さん)ワラの灰と乳濁釉を使う「黒に白」の伝統的津軽焼は、今は夫しか作っていないんですが、一方で私は自由に新しいものを作っています。例えば「落とせば割れる石」、見た目はただの石ころですが、実は焼き物で出来ている一輪挿しなんです。

(薫さん)こういうのは、俺にはできません(笑)

(千佳子さん)原料のことは夫に任せて、私は何でも作るんです。今、津軽焼は弱くなっているんじゃないか? って不安を感じる時もありますが、だからこそ逆に何でも出来るようにも感じています。

(薫さん)オリジナルの作品が大事とか人は言いますが、焼き物ってすでに何万年の伝統があるので、結局は過去のどれかに入っていると思います。けど一方で、もっと自由に、新しい方に広げていきたいとも思うんです。基本の津軽焼は決まりきっていて面白くないところもありますから(笑)

  • 津軽焼の技法
  • 野呂千佳子
  • 野呂千佳子の作品
  • 津軽焼の一輪挿し

創作のアイデアはどこから?

(千佳子さん)結婚以前から温めていたものを含めて山のようにやりたい事があって…一度にたくさんのことが出来ないんです。手を付けられないでいるものや、あきらめきれないものや、技術的なリスクが大きいもの。でも、考え続けて作ってきたから、いつか作れるって信じていきたいって思っています。

陶芸教室をしながら感じるのは、若い人たちの感性の新鮮さです。人間国宝の作品を「かわいい」と表現したり。そこに可能性を感じます。

(薫さん)古い人は「黒に白」の津軽焼は古いと言う一方で、若い人はそもそも「黒に白」自体を知らないので「新しい」と言ってくれます。じゃあどうすればいいんだという話です(笑)

伝統と自由…夫婦でまったく作風が違うというのは、面白いと思っています。

  • 野呂千佳子の作品
  • 津軽焼の想い
  • 作り手の想い

お二人がお互いを補いあってるんですね。

(千佳子さん)特に話しあって決めているわけでもないですし、もっと言えば、注文があれば何でも作るんです。受け身から創作が始まるのは、普通です。

だけど、そんな仕事をしていると、必ず「もっと面白いものを、良いものを」という想いが胸に浮かんで、すぐにでもカタチにしたくなります。いただいた注文なのに、そんな気持ちを込めてしまうので「言われたものを作るのか、作りたいものを作るのか、どっちかにしろ」って言われることもありますが。

(薫さん)奥さんから指示が出て、土や素材は全部自分がやる。あとはお互い自由。結局は楽しんで作ったものは売れるという感覚があるから、それでいいと思う。けど、振り返ってみると、自分のほうが自由にやらせてもらっていると思う。奥さんには迷惑かけました(笑)

  • 津軽焼
  • 津軽焼の想い
  • 作り手の想い

夫婦合作はされないのですか?

(薫さん)無いです!(笑)

 

  • 陶芸教室
  • 津軽焼の想い