高橋利典(株式会社八幡馬):八幡馬

馬をかたどって作った子供の遊具が発祥の八幡馬。
豊かな土着文化と子供たちへの想いが、親子の馬に込められています。

「株式会社八幡馬」…分かりやすい社名ですね。

八幡馬を作っている職人さんは、八戸に何人かいらっしゃいます。代表的な方で言えば大久保直次郎さんなどが、本来の郷土玩具としての八幡馬の伝統文化を守られています。

一方うちの会社は、どちらかというと八幡馬という素材を活かして観光土産品などを作って、より多くの人に八幡馬を知ってもらいたいという想いから始まりました。だからこそ、最初から会社として立ち上げたんですね。

そのような想いで作る八幡馬ですから、元々は材料として用いない千代紙を用いたり、帯のところに八戸にちなんだ食用菊「阿房宮」やうみねこ等の柄を入れたりと工夫を重ねています。

大久保直次郎(1942-)八幡馬職人。4代目。角材から大まかに切り出した後の行程はほぼ鉈一本で仕上げる「鉈彫り」の技法を用いる日本でただ一人の職人。青森県芸術文化報奨等、受賞多数。
  • 八幡馬メーカー
  • 新しい表現も模索
  • 阿房宮
  • 八戸市

元々は職人さんだったんですか?

いいえ。30才の時に父親を継ぎましたが、その前はアパレルメーカーに勤めていました。当時の僕は八幡馬についてまったくと言っていいほど知りませんでしたし、当然作ったこともありませんでした。

例えばアパレルメーカーの商談では、半年後一年後の商品について計画を練りますが、八幡馬は商品の入れ替えが全くないんですね。同じものを延々と売り続けるだけ…せいぜいサイズが何個かあるぐらいです。あまりの違いに愕然とした事を憶えています。

「このままじゃダメなんじゃないか」と思う一方で、職人さんたちから見ると僕はポッと入ってきた良く分からない男です。皆さんに迷惑をかけながらも、何とか少しずつやってこれたというのが実感です。少し変わったことをしようとしては職人さんたちと議論になったり…

  • 元々、八幡馬の職人ではない
  • 商習慣に頭を抱えたことも
  • 職人さんたちと上手く話せなかったことも
  • 八幡馬を作って売る事自体がひとつの伝統

伝統を守る事と、変わっていくこと…

変わった事はしにくい業界ではあると思いますが、八幡馬はそもそも昔からバラエティがあるんですよ。模様を書かない状態で寄せ書き等をするための「白木」、おなかに子供がいる「子持ち馬」、千両箱を背負っている「千両箱付き」…実に楽しいんです!

昔は農閑期の副業として作られていて、櫛引八幡宮の例大祭で売られていたそうです。昔の人は絵の具を買えなかった…というか、そもそも売ってなかったですから、めいめいで絵の具を作ったそうです。作れる絵の具の制限から、赤・黒・白しかありませんでした。

たてがみは元々は本物の馬の毛を使っていましたが、虫が湧いてしまったり入手が困難になってしまったりで、今は麻を使っています。

さらには、現存する八幡馬とはまったく違うんですが、元々は台車がついているものだったんです。子供が引っ張って遊ぶためで、男の子向けのおもちゃだったんですね。じゃあ女の子向けのおもちゃは? というと、「八幡箱」というものがあったようですが、現存していないんです。どうしても見つけたくて探し回っているんですが、どうやら紙で作った箱が3段ぐらいに重なっているもので、千代紙が貼ってあって、中におはじきや裁縫道具を入れるためのものであったらしいのですが…

  • 八幡馬の種類
  • ポピュラーな黒と赤のセット
  • 白木(しらき)、木肌の風合い
  • 八戸地方の一大民芸

すごい情熱ですね!

大好きなんです、八幡馬が(笑)

八幡馬は、仙台市の木ノ下馬・福島県の三春駒と並んで「日本三駒」と呼ばれます。他の2つとは違って、胸や腹に丸みがあるのが特徴です。誇るべき伝統文化です。

でも、僕はバブルの終わりかけの頃に戻ってきて、きっと傲慢だったと思います。職人さんに歩み寄る気持ちが足りなかったと思いますし、八戸の人は八幡馬を知っていて当たり前だという思い込みがありました。それは…僕の無知でした。

  • 日本三駒
  • 古い八幡馬の原形
  • 八幡馬の特徴
  • 馬に親しみを込めた表現

八戸の人が、八幡馬を知らない?

ある日、小学校の体験教室に呼ばれました。親子での体験でしたが、子供はおろか親の世代の皆さんも「八幡馬とは何か?」「どんな時に買うの?」といった状態だったんですね。

深く深く、反省しました。八幡馬全体の底上げをしたい、知ってもらいたい、お金なんていらないから、30分で良いから、話をさせて欲しい…って。

八幡馬の話をするには、八戸の歴史を話さなきゃいけないです。なんで馬なのか? それは、八戸が有数の馬の原産地だったからです。病気を媒介する蚊が少ないから馬産地になりましたし、やませで夏が冷涼な上に寒い土地ですから、体が大きくなる。昔は馬を育てることは政治であり国策でしたから。

…人は言います。八幡馬って、なんだか良く分からないって。けど僕なんかは、東京から車で帰ってきた時、道路沿いに立つ八幡馬の像を見ると「帰ってきたなぁ」って気持ちになります。八幡馬っていうのは、なんだか良く分からないけど、そういうものなんだろう、それでいいじゃないかって思っていたりするんです。

八戸の北にある米軍三沢基地の皆さんが、興味を持ってくれます。子供たちが楽しそうに八幡馬で遊んでくれます。八幡馬は伝統工芸品でありながら、日本・東北・青森・八戸のことを想うための何かかもしれないって、考えるんです。

  • 三沢の米軍基地の皆さんに気に入っていただいた八幡馬
  • 八幡馬のシール
  • 米軍基地専用の八幡馬
  • 八幡馬を日本の文化として認めてくれる米軍基地の皆さんへ感謝

同感です。ところで、黒が雄・赤が雌なんですか?

違いますよ! 性別は関係なくて、黒が親・赤が子供なんです。赤ちゃんの赤です。

…八幡馬は、子供のおもちゃとして親から子供へと伝えられてきたものです。故郷を知ってほしいという親から子供への想いそのものが、親と子2体でセットになっている八幡馬の構成に映しだされているように感じます。

僕も同じように、八幡馬の事を知ってほしいって願っています。強く、そう思っています。

  • 八幡馬は1つ1つ手作り
  • 幸せなこと
  • 一人でも多くの人に、八幡馬を知ってもらいたい
  • まず1つ1つ丁寧に、正直に作る